ペンシルビルの風揺れ問題を解決!~建物内部を邪魔せず居住性・快適性アップ~
ペンシルビル(細長い中層ビル)は風揺れが問題になることがあります。水平TMDなら屋上設置で制振効果を発揮するので、建物内部の空間を邪魔せず有効に活用することができます。
課題
近年、居住性や快適性、デザイン性の高いハイグレードなオフィスやホテルを用途とする中層ビルを市街地の狭小スペースに建てることが増えています。
このような細長いスレンダーなビル(ペンシルビル)は風の影響を受けやすく、ビルの風揺れが問題となることがあります。
某オフィスビルにおいても、ハイグレードとするため機能性や居住性を確保する目的で、建物計画段階から風揺れ対策を検討しました。
対策にあたっては、
- ・建物内部の空間を邪魔せず有効に活用できる
- ・建物の外観や眺望を損ねない
以上の点を踏まえ、屋上や上階部に数台設置することで、建物の利便性を保ちながら制振・風揺れ対策ができる水平TMDを採用することになりました。
表1.建物概要
対策
まず、再現期間1 年の風速を建築物荷重指針に基づき設定し、シミュレーションを行い、建築学会「居住性能指針」で事前評価を行いました。未対策の場合にはH-70~90の評価(大半の人が揺れを知覚するレベル)となり、水平TMDを設置した場合はH-50の評価となり、X方向Y方向ともに応答倍率は1/2以下となることを確認しました。
図1.事前シミュレーション結果(左:居住性能指針にによる評価 右:応答倍率比較)
風による微小な動きでも高い性能を発揮することができる振り子式の水平TMDを採用し、マス質量10tonのものを屋上階に1台設置しました。
図2.水平TMD(左:設置状況 右:構造イメージ)
表2.装置概要
結果
TMD設置後、人力加振により制振効果確認試験を実施しました。
X方向は、うねりが生じて大きく加振することができませんでしたが、TMD無効時に最大2gal程度であった応答加速度が、TMD有効時は最大1.5gal程度に低減できることを確認しました。
Y方向は、TMD無効時に最大4gal程度であった応答加速度が、TMD有効時はその半分の2gal程度まで低減されることを確認しました。
建物内部の空間を邪魔せずに風揺れ対策を行い、居住性・快適性が大きく改善されました。
図3.人力加振による制振効果確認試験結果