強風でホテルの居住性悪化の恐れ!水平振動用TMDで解決できます
細長い平面形状が特徴的な高級都市型ホテルにおいて、風揺れによる居住性の悪化が懸念されました。水平振動用TMDを設置することで専有面積を減少させずに居住性を確保しました。
課題
昨今、スモールラグジュアリーホテルという、個性やこだわりが詰まった小規模な高級ホテルが注目されています。高級志向に重点をおき、高い居住性やデザイン性、パーソナルサービスが魅力です。
某ホテルも小規模な高級都市型ホテルとして、都市部の細長い土地を活かした長い廊下が特徴的なスタイリッシュなデザインで計画されました(表1)。しかし、細長い平面形状のため強風によって短手方向(X方向)に揺れやすく、客室の居住性の悪化が懸念されました。
対策としては、狭小地のため専有面積をできるだけ無駄にしたくないという要望があったため、屋上に数台設置することで風揺れ対策ができる水平TMDを採用することしました。
表1.建物概要
対策
まず、再現期間1 年の風速を建築物荷重指針に基づき設定し、シミュレーションを行い、建築学会「居住性能評価規準」で事前評価を行いました(図1)。未対策の場合には「わりと不安を感じる、わりと不快である」H-Ⅵレベルとなり、今回のホテル用途としては、問題となる評価でした。
次にTMDを設置した場合のシミュレーション結果で評価を行ったところ、1ランクレベルが下がり、「あまり不安を感じない・あまり不快でない」という評価になりました。
図1.事前シミュレーション結果
風による微小な動きでも高い性能を発揮することができる振り子式の水平TMDでマス質量5tのタイプを採用し、屋上階に3台設置しました(図2)(表2)。
図2.TMD設置状況
表2.装置概要
結果
対策の結果、TMDによって減衰比は約1.5%から4%になり、揺れがすばやく収まるようになりました(図3)。
専有面積を減少させずに不安・不快を感じないレベルの居住性を確保することができました。
図3.人力加振⇒加振ストップ後の自由振動測定結果(屋上のx方向加速度)