工場のプレス機による床揺れ問題の改善事例
某工場にて、新たに生産機械を導入することとなりました。新しくプレス機を導入するにあたり、大きな加振力により作業環境の悪化や近隣への影響が懸念されていました。そこで防振装置を設置することで、周囲に伝わる振動を低減し作業場環境や近隣への影響を改善しました。
課題
生産工場で稼働している機械の中でも、油圧プレス機(熱間成形機)はとりわけ加振力が大きく、振動課題を生じることが多々あります。
N社工場でも、新たに30tonプレス機を導入するにあたり、プレス機の稼働により発生する振動で、作業場の床揺れや近隣への影響が懸念されていました。
工場の立地も工業地域(第二種)で、昼間65dB・夜間60dBという振動規制がありました。
そのため、お客様からプレス機より1m地点で60dBまで振動レベルを低減させて欲しいとご要望を頂きました。
さらに、新たに導入する機械のため、どんな揺れが発生しているか事前に振動を測定することができません。機械仕様からプレス機を新しく導入した時に、どのくらい大きな振動が生じるかを推定することとなりました。
お客様から頂いた機械資料をもとに、非防振時の機械基礎の振動の大きさを推定。
結果、最大で速度3mm/sを生じ、これを振動レベルに換算するとおよそ73~74dB。
ご要望のあった60dBを超える大きな振動が予想されました。(図1)。
対策
対策手段として、プレス機の下に空気ばねによる防振装置を設置する案が候補にあがりました。
この時注意しなければならないことが、防振装置は弾性体であるため機械の加工精度に影響が出ないことが必須です。
まず初めに、空気ばねで防振した際に機械の加工精度に影響が出ないことを確かめるために検討を実施。稼働部の運転パターンを元に加振力を想定し、機械変位の予測検討をしたところ製品仕様である上下方向3mm以内を満足する結果が得られました(図2)。
図2.機械変位の予測値
事前に防振効果を予測検討すると、期待できる防振効果は、工場基礎の剛性、プレスの種別、防振理論に基づく伝達率予測値、及び、弊社知見を勘案して15dBと推測。
お客様と打合せを行い、空気ばねにより対策後の振動レベル60dBを満足させる方針に決定しました。
(73~74dB対策前-15dB防振効果=58~59dB対策後<60dB)
図3.空気ばね防振装置外観
図4.空気ばね外観
表3.防振装置 基本仕様
結果
防振装置を設置後、振動レベルを測定しました。
プレス機から1m地点において、約50dBと機械振動環境を大きく改善しました。(図5)。
図5.防振対策後 時刻歴振動レベル [dB]