幹線道路の交通振動でビルが揺れる!超薄型制振装置なら大規模工事不要
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3階の事務所では、前の道路を車が通ると床が揺れ、問題となっていました。この振動対策として、置くだけで効果を発揮する超薄型制振装置「フロアメイト」を設置し、大規模な工事をすることなく、交通振動による床揺れを事務所用途に適したレベルまで改善しました。
本事例の課題
対象建物は鉄骨造(地上3階、地下2階建)で、幹線道路沿いに建っています。道路を車両が通過する際に振動が発生し、地盤を介して建物に伝わっています(図1)。特に車が多く通る時間帯では、3階の事務所床で最大7.2 [cm/s2]の揺れが発生していました。このため、3階の入居者から「床の揺れが止まらなくて仕事に集中できない。」というご相談がありました。
図1.対象建物の立地イメージ
事前計測では、1階敷地境界と3階の床中央に加速度計センサーを設置して振動測定を行いました。結果、1階敷地境界に比べて3階の床中央は16.7[Hz]を中心として振動が大きく増幅していることが確認出来ました(図2)。
図2.交通振動FFT解析結果
同時に3階床の固有振動数を図3のように、かかとの衝撃加振を用いて測定したところ16.7[Hz]が卓越していました(図4)。
図3.かかと加振測定
図4.3階床 かかと加振時FFT解析結果
本測定の結果、共振により振動が増幅している可能性が高いと判断しました。
共振による振動の増幅の場合、制振装置(Tuned Mass Damper)による対策が有効であるとされています。
ただし、本件は既設の建物で別テナントが2階に入居していたため、以下の条件が求められました。
- 大規模な工事が不要な対策が望ましい。
- 3階に設置する場合、スペースであまり邪魔にならない小型の装置が望ましい。
以上の点を踏まえ、弊社の超薄型制振装置「フロアメイト」を提案しました。
対策内容
制振装置(Tuned Mass Damper)は床の振動に対し、90度位相遅れの振動を発生させ、その反力を減衰力として共振時の振幅を抑えます。フロアメイトの特長は、高さ44[mm]、縦560[mm]、横400[mm]のコンパクトさで、OA床下などの狭いスペースに設置することが出来ます。加えて装置総質量が35 [kg]と軽量なので、施工性が良いです。フロアメイトの外観を図5に示します。
図5.フロアメイト外観図
可動マスの位置及び減衰装置の位置を調整することにより、固有振動数や減衰比を変更できます。装置の仕様は以下となります。
振動数調整範囲 | :5~15 [Hz]程度(今回は16.7[Hz]に合わせた特別仕様) |
マス質量 | :30 [kg] |
装置総質量 | :35 [kg] |
減衰比調整範囲 | :2~10 [%]程度 |
図6.フロアメイト仮設置図
図6に示すように、フロアメイトを仮設置し、制振機能のON/OFFの状態で振動加速度を測定し、日本建築学会環境基準(AIJES-V001-2018)の居住性能を評価しました。
結果
フロアメイトの制振機能ON/OFFの状態で交通振動を測定し、制振対策の効果を図7に示します。
図7.フロアメイトによる制振効果 車両通過時の床加速度比較
実際の交通振動を測定に用いる場合、全く同じ加振力の交通振動で制振効果を比較することは難しいですが、敷地境界の振動加速度はほぼ同じ振動加速度であることから、入力されている加振力は制振機能ON/OFFで変わらないと判断できます。その上で3階床の振動は7.2[cm/s2]から3.8[cm/s2]となり、おおよそ1/2にまで減少していることが確認出来ました。
表1.鉛直振動の評価レベルの説明
居住性能を評価すると、評価レベルが「Ⅴ-ⅣとⅤ-Ⅲのライン上」から「Ⅴ-Ⅱエリア」になっており、気になり具合・不快度が「やや気になる・やや不快である/あまり不快ではない」から「あまり気にならない・あまり不快でない」まで改善しており、制振装置が有効に機能していることが確認できました。
その後、1週間ほど仮置きし、居住者の方に効果をお試しいただいたところ、振動を感じにくくなったというご意見がいただけましたので、本設置が決定しました。
図8.フロアメイト本設置工事