気になる揺れを抑えます!片持ち床の歩行振動対策
制振装置
片持ち床の張り出し部分は揺れやすく、不快感や使用性が損なわれることがあります。天井懐に設置する制振装置TMDは、大きな設計変更をせずに対策ができます。
課題
片持ち床の張り出し部分は、たわみや振動が問題になることが多く、居住性能に影響を与えることがあります。
某S造オフィスビルにおいても、約7mのはね出しがある片持ち構造のテラスが計画されており、歩行時の床揺れが懸念されました(図1)。
図1.平面レイアウトイメージ
対策
振動対策としては、十分な梁剛性を確保するか、先端に間柱を設ける方法などが挙げられますが、本事例では構造的な設計変更をすることなく揺れを抑える制振装置での対策を採用し、マス質量500㎏のTMDを天井の懐に設置しました(図2)(表1)。
スパン中央部でかかと加振を行い、固有振動数の確認をしました。床は11.2HzでTMDの振動数をこれに合わせ調整しました(図3)。
図2.TMD外観(左)と設置状況(右)
表1.TMD基本仕様
図3.かかと加振した時の応答振動加速度測定結果
結果
TMD設置後、二人同調歩行を行い、制振効果を確認しました。非制振時には、3.4[cm/s2]であった振動が、制振後には1.0[cm/s2]となり、約1/3以下に低減できています。また、日本建築学会の居住性能評価規準では「やや気になる」から「あまり気にならない」の評価となり、居住環境を大きく改善しました(図4)。
図4.TMDによる効果 二人共振歩行時の測定結果