Yacmo's seismic isolation technology protects lifelines
穀物などを船舶から荷揚げするシップアンローダ。地震のトラブルで使えなくなると、物流がストップしてしまいます。ヤクモのアンローダ専用免震装置は、万が一の大地震に備え、人々のライフラインを守ります。
issue
阪神淡路大震災や東日本大震災など、大地震発生の際、湾岸に設置されているアンローダはたびたび大きな被害を受けてきました。アンローダが破損し、使用不能になると、食品用、家畜用の穀物の荷揚げが出来なくなり、周辺のライフラインに大きなダメージを与えます。
アンローダの地震による被害は主にレールからの脱線、過大な荷重による足の破損などですが、これらの対策には免震装置が有効です。免震装置は免震装置より上にかかる地震加速度を大幅に小さくし、地震被害を低減できます。ただし、免震装置は風などによってアンローダが押されると動いてしまうため、地震時以外ではロックしておく機構が必要です。まとめると、以下が要求されます。
- 地震によって脱線、脚部の破損などを起こさない(免震性能)
- 400ton以上の荷重に耐えうる堅牢な構造(装置強度)
- 強風時に動かない(ロック機構)
counter-measure
下図が、免震装置を取り付けたアンローダ全景と、免震装置単体写真、構造及び仕様です。
ロック機構:免震装置内のオイルダンパーはロック機能があり、一定の力がかかるまでは動かないようになっています。そのため、地震時には動いて免震機能を発揮しますが、強風時には動きにくい構造となっています。
装置強度について:免震装置がアンローダの荷重を支える十分な強度を持っているかどうかはFEM解析によって確認しています。更に、免震装置開発時にFEM解析と実大加力試験を行い、解析結果と実験結果が合っていることを確認しています。
免震性能:免震性能については、あらかじめシミュレーションによって十分な効果があることを確認しています。シミュレーションは開発時に1/8スケールモデルを用いた加振実験を行い、それとよく合うことが確認された手法を使用しています。
また、アンローダは柔軟構造物であるため、免震装置の検討にはアンローダの動特性も含めた検討が必要になります。その為、FEM解析によってアンローダのモードパラメータを導き出し、それと免震装置を組み合わせた2質点系モデルを作成、シミュレーションを行います。そのように作成した解析モデルは、開発時にスケールモデルによってよく合うことが確認されています。下図は、アンローダをモード解析した結果です。これは休止状態の形状ですが、この他にも荷揚げ時の状態など、複数の状態について同様の解析を行いました。
result
地震時の免震効果については、シミュレーションによって事前に検討しています。下図は、東北地方太平洋沖地震時の石巻で観測された地震波を入力したときのシミュレーション結果です。これを見ると、免震装置によってアンローダの重心位置加速度が1/5以下に低減されることが分かります。
その他、様々な地震波形を入力した場合のアンローダの重心位置加速度の最大値が下図になります。緑のグラフが地震加速度の最大値、赤いグラフは免震装置がない場合、青いグラフは免震装置がある場合の結果です。すべての地震について良好な結果を示しています。
また、アンローダの脚軸力についても同様にまとめてみました。赤は免震装置がない場合、青は免震装置がある場合です。マイナスの値を示しているグラフは、足がレールから浮き上がってしまっていることを示しています。JMA神戸波、ポートアイランド波、東北地方太平洋沖地震波において、免震装置がない場合は脚を浮き上がらせる力が働いています。すなわち、非常に脱線の可能性が高い状態といえます。免震装置のある場合はすべての場合、すべての脚でプラス方向の力になっており、レールからの脱線の危険性は非常に低くなっています。